SOFTWARE MEETS HARDWARE - プロジェクトストーリー

SOFTWARE MEETS HARDWARE.

PROJECT STORY

【開発事例】アイデアを形に!

車上荒らし抑止システムのプロトタイプ開発の裏側

キセキ株式会社では、お客様への価値提供をさらに高めるため、受託開発と並行して自社プロダクトの開発にも積極的に取り組んでいます。この記事では、その一環として進められた「車上荒らし抑止システム」のプロトタイプ開発について、企画からハードウェア・ソフトウェア開発の全工程をご紹介します。

CHALLENGE

プロジェクトの始まりと目的

このプロジェクトは、自社プロダクト開発を通して新たな知見やノウハウを獲得し、当社の技術的コア・コンピタンスを強化することを目的にスタートしました。開発チームは代表の坂本と専任開発者1名の計2名。ソフトウェア開発を専門とする私たちが、ハードウェアを組み合わせたプロダクト開発に挑戦した記録です。

筐体の構造を検討しているホワイトボードのスケッチ

SYSTEM OVERVIEW

開発した車上荒らし抑止システムとは?

私たちが開発したのは、車への不審な侵入を検知し、即座に所有者のスマートフォンへ通知を送るシステムです。
一連の流れをインフォグラフィックでご紹介します。

侵入検知のイメージアイコン

1. 侵入を検知

車内に設置した人感センサーが不審な動きを捉え、システムが作動します。

サーバーへ送信するイメージアイコン

2. サーバーへ送信

検知信号が即座にAWSサーバーへ送信され、所有者のアカウント情報と紐付けられます。

スマートフォンに通知が届くイメージアイコン

3. スマホに通知

サーバーからプッシュ通知が送られ、どこにいても車の異常をリアルタイムで把握できます。

DEVELOPMENT PROCESS

開発の道のり: ハードウェア

ゼロから物理的なデバイスを作り上げるため、試行錯誤を重ねながら開発を進めました。

ESP32を搭載したブレッドボードでの回路試作

Step 1: 回路試作と技術選定

まず、ブレッドボード上に電子部品を配置して回路を試作。中核となるマイコンには、省電力で無線通信が可能な「ESP32」を採用しました。

KiCadで設計した基板の設計図

Step 2: 基板の設計と製造

オープンソースのツール「KiCad」で基板を設計。データをオンラインの基板製造サービスに入稿し、オリジナル基板が完成しました。

部品をはんだ付けした完成基板

Step 3: 部品の実装(はんだ付け)

完成した基板にマイコンなどの部品を手作業で実装(はんだ付け)。細心の注意を払い、慎重に作業を行いました。

Step 4: 筐体(ケース)のモデリングと製作

完成した基板を保護するケースは3Dプリンタで製作。3D CADで設計しました。下のタブを切り替えることで、ユーザーが自由に回転・拡大できる「インタラクティブ3Dモデル」と、「設計画面」の両方をご覧いただけます。

FreeCADでの設計画面

開発の道のり: ソフトウェア

ファームウェア

デバイスを制御する組込みソフトウェア。省電力なBLE技術を採用し、スリープモードやハードウェア割り込みを駆使してバッテリー消費を最小限に抑えました。

スマートフォンアプリ

侵入検知時にプッシュ通知を受け取るアプリ。所有者のスマートフォンを認証キーとして利用できる、セキュアな仕組みを実装しました。

サーバーサイド

デバイスからの警報をスマートフォンに届けるための中継サーバーです。サーバーレスアーキテクチャを構築し、安定した通知システムを実現しました。

TECH SPEC

技術仕様

本プロジェクトは、以下の技術スタックによって実現されています。

ファームウェア Arduino言語 (C/C++)
スマートフォンアプリ Swift (iOS), Kotlin (Android)
サーバーサイド AWS Lambda (TypeScript), DynamoDB
通信 Bluetooth Low Energy (BLE)
基板設計ツール KiCad
3D CADツール FreeCAD
3Dプリンタ Creality Sermoon V1 Pro

TEAM

このプロジェクトを推進したメンバー

坂本信輔

坂本 信輔

代表 / プロジェクトリーダ

ソフトウェアの知見を活かし、新しい価値創造に挑戦。
今回のプロジェクトでは企画とハードウェア選定を担当。

菅野雅人

菅野 雅人

開発担当

ハードウェアからサーバーサイドまで、本プロジェクトの
開発全般を担当。新しい技術への探求心が強み。

CONCLUSION

挑戦の先に見えたもの、そして未来へ

今回のプロジェクトは、ビジネス上の判断によりプロトタイプ開発段階で一区切りとなりましたが、私たちはこの挑戦から、ハードウェアとソフトウェアを融合させたプロダクト開発の全工程を経験し、お金では買えない多くの貴重な知見を得ることができました。

キセキ株式会社は、これからも受託開発で培った技術力を基盤としながら、このような自社開発プロジェクトへ積極的に挑戦し続けます。

私たちは『匠』と呼ばれる職人集団を目指し、お客様、そして社会全体へ新たな価値を提供してまいります。